最後の最後で少額訴訟をとりやめることにした!その理由は?

1ヶ月延長してもらった口頭弁論日も、いよいよ間近に近づいてきました。
「付(ふ)郵便送達をして訴訟を継続、欠席裁判で勝訴」という道は、被告の居住を現地で確認することが最後の手段となりました。
あくまでも「公平性」を重視する裁判所では、証拠がそろっていても、訴状が被告に届かなければ裁判を継続させることができないという判断です。

そもそも何のために訴訟を起こしたのか、もう一度原点に立ち返って考えてみます。
被告は弊社の無料のデモ機を借りました。しかし、返却期日になっても返却しませんでした。
連絡を取ると、「まだテストしていない」ということで返却期間を延長します。
延長した返却期間が過ぎても返ってこなかったので、もう一度連絡を取ると「今日、送り返す」と言います。それを信じて待ちますが、それから2日過ぎても返ってこず、連絡を取ろうとすると今度は着信拒否。メールに連絡を入れても返事がありません。

その後、2度にわたり催促をうながす書面を郵送しましたが、これにも無反応。書面の内容は、返却しない人に対しても失礼の無いよう、誠意を持って丁寧に書いたつもりです。
そして内容証明から訴訟に移ります。
とにかく品物を返してもらっていれば訴訟など起こす必要がなかったわけですが、どうしても起こさざるを得なかったのは、被告を信じ、誠意を持って対応していたデモ機担当者の落胆と、自分一人のいい加減な行為が、たくさんの方に影響を及ぼしている事への責任を認識してもらうための訴訟でした。

訴訟はビジネスか?

ここで思い出しました。「訴訟はビジネスだ」と言い切った弁護士の書いた本のこの一言を。
確かにその通りで、調査費用や弁護士費用など様々な経費がかさみ、勝訴しても経費倒れになってしまっては本末転倒であることは分かっています。だからこそ経費のかからない本人訴訟で、なおかつ時間のかからない少額訴訟を選択したわけです。

ビジネスという側面だけから見ると、「勝訴」しなければ意味が無く、債権を回収して諸経費を差し引いても手元に回収金が残る、というのが理想のパターンです。
ただ、被告がこちらの要求(請求)に応えて金銭を支払ったからといって、「こちらの要求に応じた=責任を認め反省した」とは言い切れません。「面倒だから払っておくか」と払っただけかも知れませんが、訴訟としては最終的に払ってもらえれば、それで完結。THE END です。

例えば今回の場合のように、被告の居住が確かめられれば、付郵便送達をして、被告の欠席裁判、原告勝訴、少額訴訟には仮執行宣言がついているため、すぐに強制執行、そして仮に、仮にですが被告が請求金を払ったとします。裁判は終結です。万歳三唱です。が、内心は決して釈然とすることはありません。

訴訟を起こした本当の理由

よく考えると、「訴訟を起こす」こと「勝つ」こと「損害金を払ってもらう」ことが目的ではなく、被告が「何を思っているか」を知りたかったんだと思います。だから訴訟を起こした。
裁判の中で、返さない理由は何なのか?何か特別な事情があったのか?それとも「返さない人の心理」でも説明した「意志欠如の人」なのか?など、被告の真意を知りたかったのです。

どんな回答であっても、事実を知りたかった。品物を借りてから返却を放棄する間、ひょっとするとお客様になっていたかも知れない被告が何を思っていたのか、あるいは何も思っていなかったのか、本当のところが聞きたかった。
でき得ることならば、裁判所という場を借りて、反省を促すことはできないまでも、自らの怠慢が収集できない事態にまでなるということを、法廷に出廷させることで身にしみて感じてほしかったんです。

本当に自分という意識が希薄なキツネのようにずる賢い人間であったなら、どんな手段を使ってでも損害金を支払わせようとするでしょうが、「すまなかった」とほんの僅かでもわびる気持ちがあったのなら、全てを無かったことにしても良かったと今では思っています。

しかし、被告の真意を確かめるには、法廷に引っぱり出すほかに聞き出す方法がありません。
訴状も返ってくる、住民票も無いとなると、現地へ赴いて居住を確かめる以外道は残されていません。居住が確認できたらできたで、付郵便を送達して、恐らくそれも被告は受け取らないでしょうから、口頭弁論日の期日に出廷しないまま欠席裁判となり、原告勝訴となる可能性が高くなります。

そうすると、結局被告の顔を見ないまま、被告の話を聞けないまま、審理は終了。裁判自体はそれで終わってしまいます。勝訴しても肝心の「被告の真意」が全く分からないわけです。
それならば、何も勝訴にこだわる必要はなく、勝訴にこだわらなければ現地で調査することも不要で、不必要な移動代もかかりません。
このようなことから、これ以上裁判を長引かせても得るものは何もないと判断し、不本意ですが、この訴訟を取り下げることに決定しました。

予期不安からこのようなことを考えているのではありません。訴訟をビジネスとして考えた側面と、訴訟を起こすに至った心理的プロセスをもう一度ふり返ってみた結果です。ビジネスとしては、現地に行く経費がかさむことや空振りに終わるリスクを考え、心理面では訴訟で本当は何が得たかったのかをよく認識し直すことで、この訴訟を取り下げる決断を下したのです。

訴訟を取り下げることを決定し、裁判所の担当書記官に連絡を入れました。
「今回の訴訟ですが、取り下げることにしました」
「そうですか」
無駄だとは分かっていましたが一応聞いてみました。
「ほかに被告を法廷まで引っ張り出す方法のようなものはありませんか」
「う~ん ・ ・ ・ ・ 。」
無駄でした。基本的に手続き以外答えてくれないのは終始一貫しています。

「取り下げるにあたり、何か書類の提出などが要りますか?」
「はい、そうしたら、取り下げ書のひな形をFAX しますので、そちらに署名捺印をしてFAX で返信してください」
打ってかわって、こちらは滑らかに舌が回るようです。
「それだけでいいんですか?」
「はいそれだけです」

随分考えたあげくの訴訟取り下げの決断でしたが、結構あっけないものだなと感慨にふけりながら、今質問できることは無いか考えました。こちらは素人です。今後何か無い限り、書記官と話す機会もないだろうと思い、素人ならではの質問をしてみました。

「訴訟を取り下げたわけですが、これを一時的な取り下げとして、継続させ、被告と連絡が付くか居住が確認された時点で、再び復活させることは可能ですか?」
「それはできません。訴訟は取り下げた時点で終わりです。次に訴訟を起こす時は、1から手続きを踏んでください。それに、本件は損害賠償事件なので、時効までに3年ありますから、いつでも訴訟を起こすことができます」

「時効 ・ ・ ・ ですか」
考えてもみませんでした。「時効」です。事件には時効という概念があったことを、すっかり忘れていました。

もう一つ気になっていたことがあります。
書類等の送達に関してですが、不送達で戻ってくるのには、被告がいないなどの他に訳があるのではないかという疑念です。平日送達も休日送達もそうですが、全て郵便で配達しています。

郵便は小包ではないので日にちや時間が指定できません。また、裁判所が手配しているので、こちら側ではどのような時間帯に何度配達しているのか知ることもできません。その辺りのことをある程度知ることができれば、不送達となっても納得することができます。

もし、多少配送の金額がかさんでも、こちらで指定した日にちや時間帯に届けられる融通を利かせてくれるのであれば、宅急便で送ることは可能かどうか聞いてみました。
「書類の送達は全て郵便ですよね」
「はい、そうです。」
「そうすると時間の指定等もできませんね」
「はい」(何が言いたいの?というニュアンスがプンプンしてくる話し方に変わりました)
「例えば、郵便局ではなく、こちらが指定した配送業者で送ることはできませんか?」
「それはできません。」(キッパリした口調です)
「それなら、送達する書類をこちらで預かって、こちらが配送業者を手配して被告に送ることは可能でしょうか」
「そういったことはやっていませんし、できません」(有無を言わせない口調に変わりました)

やはり国の機関の配送は、国が運営する郵便事業者が執り行うということで、その他の事業者は付け入る隙がないのでしょうか(郵便事業が民営化になった今でも、公平性を謳う裁判所はそう判断するのでしょうか)。

それにしても“融通”という意味からいえば、配送の日付や時間などが一般の配送業者は細分化されており、かなり融通が利くことは既に知っている通りです。郵便事業の民営化がどうのということではなく、そういう選択肢も認めるだけの柔軟性を、裁判所は持ってもいいのではないかと思います。

残念ながら、「書類送達は郵便で」の基本方針は変わらないようです。結局、何時頃に何回そこ
に行ったかなどの配送状況は、こちらでは分からずじまいになりました。

「柔軟性」あっての「公平」だと思いますが・・・。

これで私の訴訟は終了しました。結果的に、品物も戻ってこなければ、被告を法廷に引っ張り出すこともできなかったのは、初期段階での私の甘さが導いた結果です。
今現在訴訟を起こそうかどうか悩んでいるあなたは、すぐに行動に移してください。悩んでいる暇はありません。私のように余裕を持ちすぎると、後手になってしまいます。どうかあなたの気持ちが砕けて散ってしまわないうちに、自らの手であなたを守ってください。

送られてきた「取下書」に署名、押印して郵送すると、訴訟の終了です。何とも味気ない用紙でした。
「取下書」を郵送して2日後に、裁判所から1通の封筒が送られてきました。封筒の中を見ると、「切手残額返還のお知らせ」と「受領書」が綴りになっているA4用紙と、訴状と共に予納した切手が入っていました。受領書に署名、押印してFAXで送って、本当にこれで訴訟の終了です。

予納した切手は3,910円。返還されたのは1,430円。2,480円分の切手を使用したことになります。しかもご丁寧に、この用紙と切手を送ってくる郵便代も、予納切手の中から使うという徹底ぶりです。あくまでも「訴訟を起こすのも取り止めるのもあなたの勝手だから、あなたのお金を使って全てやりますよ」というスタンスを崩しません。これも「公平・中立」の為せるわざなんでしょうか。

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