付郵便送達とは?

書記官と電話でのやり取りのあった翌日。本当であれば今頃、簡易裁判所第307号法廷で口頭弁論が行われているはずの6月20日に3枚のFAXが送られてきました。

FAXの1枚目の表紙には、記「付郵便上申書のひな形」とあり、2枚目は「付郵便の上申書」、3枚目は「調査報告書」となっています。

「付郵便」。また分からない言葉が出てきました。「つきゆうびん」なのか「つけ」なのか「ふ」なのかも分かりません。「付」をどう読めばいいのかすら分からなかったので調べましたが、これには少し時間がかかりました。どこを探してもなかなか出ていません。

「こんな事当たり前なんだろうか」などと不安になりながらも、見つけました。
「付郵便(「ふ郵便」と読みます)送達」。どんなものかというと、平日送達や休日指定送達など送達方法を変えても不送達になった場合、被告が転居してしまって住所が分からないとか失踪または行方知れずになっている場合を除いて、被告がそこにいることが確認できた場合、書留郵便に付(ふ)して送達が行われる方法を「付郵便送達」といいます。

簡単にいうと、被告がそこに住んでいて、何らかの理由(仕事なのか、居留守なのか、受け取りを拒否しているのか)で送達できなかった場合に取る送達方法です。

この「付郵便送達」は公示送達と近い特殊な送達方法ですが、公示送達が被告の住所・職場などが不明で少額訴訟に適応しないのに対して、「付郵便送達」は少額訴訟を含めた全ての訴訟が対象となります(ただし、被告の住所地に被告が居る可能性が高い場合に適用されます)。

「付郵便送達」は、被告が受け取りを拒否したり居留守を決め込んでも、書留郵便を発送した時点で送達があったと見なされ訴訟は継続されます。被告は無視していると、口頭弁論日に出席で
きず、欠席裁判となってしまうわけです。
しかしそれにしても、この様な書類を送ってきても、簡易裁判所からは「付郵便」に関して何一つ説明がありません。念のため、改めて電話で聞いてみましたが、「住民票を添付して送って下さい」と言うだけで、この大きな効果の説明は微塵もありません。

こちらで調べるしか方法がないのです。訴訟のテクニックを促すような発言が出来ない立場であ
れば、仕方がないとも言えますが・・・。

付郵便送達にはいくつかの条件がある

「付郵便送達」は、被告が受け取りを拒否しても、送達したと見なし訴訟は継続、口頭弁論日に被告が出席しなければ、少額訴訟は1期日審理のため、欠席裁判となって被告の知らない所で判決が出てしまう、という大きな効果を持っています。

そのため、付郵便送達は簡単には認められません。住民票はもちろんのこと、書記官が言うように、調査報告書の項目には「①表札等の有無」「②郵便物の受取状況、洗濯物の状況等」「③面接した相手(その住所、聴取内容)×2名」「④その他の事実」と、これら詳細な調査が必要になって来るわけです。

今わかりました。担当書記官が現地調査にやたらとこだわったのは、この事があったからだということが。次のステップへ導いてくれていたのかも知れません。それならそうと、最初から話してくれれば、「付郵便」がどんなものなのか調べる手間が省けたのに、こんな事を教えるのも中立性に支障がでるとでもいうのでしょうか。不思議です。

さて、現地へ行くにはかなりリスクがあります。被告の住所はアパートと思われますが、痕跡が何もなかった場合、隣近所とほとんど付き合いがない場合など、無駄足になってしまう可能性も考えられます。

そこで、まずはじめは住民票を取ることにしました。これにも少し不安があります。
1つは被告が学生で、住民票を現居住地へ移していない場合、もう1つは、個人情報保護法施行から既に数年たっていますが、この事で、役所関係が個人情報の公開に関して神経質になっていないかという不安です。

予期不安とは少し違いますが、ここでも、まだ分からないことに対しての漠然とした不安が足を引っ張ろうとしています。しかし、もうここまで来たら進むしかありません。今までやってきて、考えて立ち止まっていても現実は何一つ変わらない、ということが分かりました。何もしないで後悔するよりも、やった結果たとえ後悔するようなことになっても、これは、経験という形で必ず身に付いてくるということも、この訴訟を進める過程で再認識させられました。

訴訟という行動を起こしたからこそこれだけの経験や知識を得ることが出来たのであり、逆に避けて通っていれば、何も知り得なかったことでしょう。
こんな事をあれこれ考えながら行動を先送りにし、被告の住所地の役所に電話をかけるのに、実際には9日間かかってしまいました。

他人の住民票を取ることはできるのか?

最初に住民票を取ることに決めて、まずは被告の住所地の役所に電話をかけました。受付に住民票の件で電話をしたと伝えると、担当部署の市民課に廻してくれました。
「はい、市民課です」
「恐れ入ります。住民票の件に関してお伺いしたいんですが」
「はい。どうぞ」
「そちらに住んでいる方の住民票を、東京で取ることは出来ますか?」
「それは、ご本人の住民票ということですか」

本当のことを言いあぐねて、少し漠然とした質問になってしまっていました。正直に言ってみます。
「実は、現在そちらに住んでいる方に対して訴訟を起こしているのですが、その方の住民票を用意するよう裁判所から連絡がありまして・・・」
「そうですか。それなら大丈夫です。住民票をお出しします」

結構あっさり言われたので拍子抜けしましたが、本当にこれでいいんでしょうか。少し不安になります。私が嘘をついているかもしれません。実は続きがあります。

「そうしましたら住民票発行の申請書を作ってください。ご記入いただく項目は、
1.必要書類は何か、そして何通必要か、
2.住民票を取る方のお名前・ふりがな・住所
3.あなたのお名前・住所
4.発行の理由と、裁判所からの資料を添付して郵送してください」

やはり電話だけではダメで、発行の具体的な理由と、それを証明する裁判所からの資料を添付する必要がありました。返って安心しました。電話1本だけで私たちの住民票があちらこちらに発行されていてはたまったものではないですから。

 郵便小為替(ゆうびんこかわせ)とは?

住民票の発行には快く応じてくれました。他に必要なものはないか市民課に聞いてみました。
すると、
「申請書と資料の他に、住民票の送り先の住所を記入して切手を貼った返信用封筒と、住民票発行に300円かかりますので、郵便小為替(ゆうびんこかわせ)を送って下さい」

返信用封筒は分かりますが(当たり前のことかも知れませんが、返信の負担もこちらなんですね)、郵便小為替。存在は聞いていましたが、見たことも使ったこともありません。

このようなものは使ったことがありません。簡単に説明します。

郵便小為替とは、現金の代わりになる有価証券の一つで、手形の一種です。
金券と言ってもいいかも知れません。受け取った相手は、これを郵便局で現金に換金してもらうという仕組みです。
郵便局の為替窓口へ行って「300円の定額小為替を下さい」と頼むと、郵便小為替を発行してもらえます。ここで注意が必要なのは「定額小為替」と指定することです。郵便為替には普通為替と小為替があります。普通為替は発行手数料が高くなります(定額小為替の発行手数料は2007.10.1より一律100円になりました)。

郵便小為替証書は「定額小為替証書」と「定額小為替払渡票」が綴りになっています。表と裏に記入する所がありますが、何も書かないでそのまま送ります。

郵便小為替が分かった所で、発行してもらった小為替と、住民票発行の申請書、裁判所の書類のコピー(今回は「付郵便上申書」と裁判所の印のついた送り状をコピーしたもの)、返信用封筒をセットにして、被告の住所地の役所に郵送し、住民票の発行を待つことになりした。

kkk

さて、被告が居住しているかどうかの確認のために、被告の住所地の役所へ住民票の発行を申請したまま数日が過ぎたころ、いよいよ返信用封筒が郵送されてきました。
ここに被告の住民票が入っていれば、被告がそこにいる可能性が高まり、いよいよ「付(ふ)郵便」を送達して訴訟を継続することができます。願うような気持ちで封筒を開けてみました。

そこには、1枚の精算書と何枚かのA4用紙が三つ折りにされて入っています。期待と不安で胸をふくらませながらA4用紙を広げてみます。なんとA4用紙の正体は、先にこちらから送った書類(住民票申請のお願い、裁判所からの書類2通)でした。そして精算書を見て呆然となりました。

精算書の一番下の通信欄には、赤いゴム印で
「ご返送しました申請所につきましては、申請内容に該当される方が見あたりません。」
と丁寧な言葉使いの中にも、定型句を刻印したゴム印ならではの事務的な冷たさが感じられました。

やはり住民票を移していないか、登録していなかったようです。
予測していなかったといえば嘘になりますが、一縷(る)の望みも持っていました。

しかし、こうも見事に不安が的中するとは考えもしませんでした。
神様はどうしても私に「現地へ行け」とおっしゃりたいのでしょうか。住民票が取れなかった今、方法はそれしか残っていません。

少し考えてみることにします。
この申請で使用した金額は、こちらから申請書を送った郵送代80円と、当該役所からこちらに送られてきた返信用封筒(事前に80円切手を貼って入れておいた封筒)郵送費80円、合計160円のみで、住民票を発行するために役所で検索したり探したりした経費のようなものは発生しませんでした。(住民票の発行がないので当然といえば当然ですが)

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